日本酒の最大輸出先、アメリカのSake消費

アメリカの日本酒

Cimplex Marketing Group Inc.はロサンゼルスに拠点を置き、グローバル事業を展開する日本企業を市場調査とマーケティングの分野で支援する日系の会社です。 

日本酒造組合中央会は2018年の日本酒の輸出が数量、金額ともに過去最高を記録した、と発表しました(2019年2月7日プレスリリース)。数量は25,746キロリットル、金額は222億3150万円で10年前の3倍に増加しています。そして初めて200億円を突破しました。

日本酒の輸出統計
出典:日本酒造組合中央会

国別では、アメリカが数量(5951キロリットル)、金額(63億1300万円)ともに1位で、全体の4分1を占めています。都市を中心にプレミアムsakeを嗜好する消費者が増えており、日本食以外とのペアリングも広がるなど、日本酒は新たなフェーズを迎えていると言えます。

アメリカの日本酒輸入データ

上記データを逆の立場、つまりアメリカの輸入ベースで見た時、以下のような統計となっています。

アメリカの日本酒輸入統計
米税関の記録をもとにCimplex Marketing Groupが作成
  • 2017年輸入量 11,300トン (1049シップメント)
  • 2018年輸入量 11,106トン  (863シップメント)

この数字は、米税関が管理する輸入のシップメント記録に基づいて計算したものです。荷受け場所が日本、荷下ろし場所がアメリカで、品目がsakeやrice wineとなっているシップメントを調べました。

重量ベースでは2017年より2018年のほうが若干低くなっています。日本のデータは内容量に基づいたキロリットルで出していますが、ボトルに入れると1.7~1.8倍の重さになります。輸出量5951キロリットルx1.7=10,116で、輸入量の11,106トンとほぼマッチします。

*清酒1キロリットル≒1トン

アメリカにおける日本酒消費量

アメリカの酒蔵 Sequoia Sake
サンフランシスコの酒蔵、Sequoia Sake (Photo: Sequoia Sake)

日本からの輸入品だけに留まらないのが、アメリカの日本酒消費の特徴です。北米には日本酒を製造する蔵元が20社ほど存在しています。大きく2つのタイプに分かれ、1)日本の酒造が現地生産する、2)日本人やアメリカ人が独自のブランドを現地で立ち上げる、というケースがあります。

1)は今のような日本酒ブームの前から存在しており、1980年代に大関が進出したのを皮切りに、松竹梅、月桂冠、八重垣、白山、白鹿といったブランドが次々とアメリカで生産を開始しました(白山と白鹿はその後撤退)。現地生産の品は安価で提供され、日本食レストランでアメリカ人が気軽に飲むsakeとして大きく需要を伸ばしました。コメの生産に適した土地や気候があることも、日本酒のローカライズを後押ししたと言えます。最近では獺祭で人気の旭酒造が東海外に酒蔵を作り、獺祭とは別ブランドでより安価な商品を生産すると発表し、話題となりました。

2)は日本酒の魅力に惹かれて日本で修行をした人が、アメリカで蔵元を立ち上げるケースです。ビールやウィスキーを含めたアルコール飲料全体が空前の「クラフトブーム」であり、日本酒もそのトレンドに乗って現地でこだわりの大吟醸や純米酒が生産されるようになっています。オレゴンで1992年に創業したSakeOneはローカルブリュワリーの先駆けで、ほかにもサンフランシスコのSequoia Sake、コロラドのGaijin 24886、カリフォルニアのSetting Sun Sake 、テキサスのTexas Sake 、ニューヨークのBrooklyn Kura、メーン州のBlue Current Brewery、バージニア州のNorth American Sakeなどがあります。

現地生産される日本酒の量は輸入の約3倍と言われています。つまりアメリカでは年間2万5000キロリットルの日本酒が消費されているのです。これが他国との大きな違いでもあります。

アルコール飲料市場における日本酒

アメリカのアルコール飲料市場
アルコール飲料市場(単位キロリットル)

アメリカのアルコール飲料市場は2370億ドルで、外食での消費が1070億ドル、家庭での消費が1300億ドルという内訳です(*1)。消費量は3333万キロリットル、ワインはその11.4%の380万キロリットルです(*2)。前述した日本酒の2万5000キロリットルという消費量は、ワイン市場の1%にも満たないことになります。アルコール飲料全体においては0.1%以下と、ほぼ存在していないに等しいシェアです。

アメリカの巨大な市場において日本酒はまだ大きな開拓の余地を持ち、さらなる拡大が期待されます。ワインや他のアルコール飲料と差別化を図り、時代に合わせたマーケティングで存在感を高めていく必要があります。

輸入シップメント記録を調査

Cimplex Marketing Group, Inc.では、アメリカに輸入されるシップメント記録を調査します。「日本酒」といった特定品目、シッパー、インポーターといった企業に絞って個々のシップメントを検索することが可能です。詳しくはこちらのページをご覧下さい。

出典:

*1 Mintel “American Lifestyle 2018”
*2 Park Street “US Alcoholic Beverage Market – Overview

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Miyuki Sato

ロサンゼルスに拠点を置くマーケティング会社、Cimplex Marketing Group, Inc.の代表。専門は市場調査。在米20年以上、英語学習の本を4冊出版している。当ブログではビジネス英語に関する記事を多数投稿。