カリフォルニア 州封鎖の60日間

カリフォルニア 自宅待機令
カリフォルニア州封鎖の60日間

新型コロナウィルスの感染件数、死者数ともに世界最大のアメリカ。特に事態が深刻なニューヨーク州がまず報道で取り上げられますが、地域ごとに状況は異なっています。当社が所在するカリフォルニア州は3月19日に自宅待機令 (Stay at Home Order) を発動して社会経済活動を大きく制限しました。それから約2ヵ月間の政策と成果を分析し、市民生活を振り返ってみます。

カリフォルニアの基礎データ(*1)

面積:423,927 ㎢(日本 377,915 ㎢)

人口:3951万人(日本 1億2650万人)

GRP:$3兆1370億(日本 $4兆9710億)

面積は日本より少し広く、そこに日本の3分の1の人口が住んでいることになります。50州で最も人口が多く、国全体の約8分の1を占めます。地域総生産(GRP)は3兆ドル(約300兆円)と桁違いに大きく、国と並んでも世界第5位の経済圏を形成しています(*2)。エンターテイメントで有名なロサンゼルス、西海岸の金融ハブであるサンフランシスコ、そこから拡大するテクノロジー集積地のシリコンバレーなど、多様な産業を有する一帯です.

国に匹敵する一帯の地方政治

感染の拡大に伴って、州政府と自治体が対策の主導を取るようになりました。カリフォルニアという、国にも匹敵する一帯を地方政府が仕切るわけですが、州政府が取った政策は驚くほど迅速で、徹底したものでした。

(タイムライン参照)州内で初めての死者が確認された日に緊急事態宣言を行い、自宅待機令は全米の州に先駆けて発動しました。店舗の閉鎖を強制し、不要不急の外出を禁止する厳しい内容で、あっという間の進展、有無を言わせない政策に州民は茫然とするしかありませんでした。

政策タイムライン
カリフォルニア他州、全米
3月4日州内で初の死者
緊急事態宣言(全米で4番目)
3月4日以前の緊急事態宣言
ワシントン州 2月29日
メリーランド州 3月1日
フロリダ州 3月1日
3月13日全米で緊急事態宣言
(連邦政府)
3月19日州として初めての自宅待機令 (Stay at Home Order) を発動、期限なし
エッセンシャルビジネス以外は一時休業または在宅勤務による活動
3月21日~ニューヨークなど他州が自宅待機令を発動
3月下旬郡、市などの自治体が公共施設を封鎖
・公園
・海岸
・公民館
・遊歩道
4月14日経済と社会の再開に向けた指針 (Resilience Roadmap) を発表
これまでの最も厳しい段階を「ステージ1」と定義
5月8日約50日続いたステージ1からステージ2へ
営業可能なビジネスの業種を拡大

圧倒的なリーダーシップの知事

記者会見するニューサム知事
記者会見するニューサム知事 (Facebook Live)

カリフォルニアの陣頭指揮を取るのがギャビン・ニューサム州知事(民主)です。かつてサンフランシスコ市長を務めたリベラル派で、52歳の若さ。画像を見て「あれ、なんかイケメン?」と思われた方、あなた一人ではありません。甘いマスクで市長時代にMayor McDreamyというニックネームがついたほどです(詳細割愛、ググれば出てきます)。

それはさておき、ニューサム知事は非常に力強いメッセージで自宅待機令を発表し、州民への協力を呼びかけました。他州がまだ何もしていない時期のこの発令に、不安や不満を持たなかった人は皆無に近いでしょう。ですが忖度も躊躇もせず、どの州よりもスピーディに動く州知事を信じてみようと市民は腹を括ったのです。

ニューサム知事はそれから圧倒的なリーダーシップを発揮します。対策に本腰を入れないホワイトハウスと決別し、独自に医療体制を整え、検査件数を増やし、製造メーカーと交渉してマスクや人工呼吸器を入手、他州に提供するほどの備蓄を確保します。州内のテクノロジー企業の協力を得て科学的な情報分析やITを活用した感染経路の特定に力を入れる一方、中小企業、サービス産業、貧困家庭、高齢者などへの支援策を次々と打ち出していきます。

また、毎日正午からの記者会見をFacebook LiveとYouTube Liveでストリーミング配信し、テレビ放送向けの映像もストリーミングを通じてフィード、記者もリモートでの参加という無人の会見スタイルを導入します。日本的な表現で「3密」を作らない努力として会見にもテクノロジーを駆使し、自ら感染リスクを抑える手本を示して説得力を高めました。

2ヵ月後の成果は?

他州よりも遥かに厳しい発令だったにも関わらず、ニューサム知事はこの2ヵ月、80~90%という高い支持率を維持しています(*3)。コロナ禍以降に低迷し50%を下回るトランプ大統領とは対照をなしており、知事の政策は州民の評価を得たと捉えることができるでしょう。

5月19日までの州別の累計(表参照)において、カリフォルニアは感染件数で第5位、死者数で第8位となっています。しかし人口単位で換算した感染率は34位、死亡率は30位と低く、全米の数値を大きく下回っています。4000万人という巨大人口の爆発的な感染はこれまで食い止められており、病床数、ICU、人工呼吸器にも大きな余裕があって医療崩壊にはほど遠い状況です。検査件数は2位ですが、人口単位の受検率がまだ低く、検査の拡大が急ピッチで進められています。それでも日本の受検率の16倍以上です。

感染件数と感染率(5月19日現在、*4)
感染件数人口100万人あたりの
感染件数
感染率の順位
50州+ワシントンDC
1. ニューヨーク361,26618,5711
2. ニュージャージー150,08716,8982
3. イリノイ96,4857,6148
4. マサチューセッツ87,05212,6303
5. カリフォルニア81,8272,07134
全米1,554,9514,698n/a
日本16,305129n/a

死亡者数と死亡率(5月19日現在、*4)
死者数人口100万人あたりの
死者数
死亡率の順位
50州+ワシントンDC
1. ニューヨーク28,4801,4641
2. ニュージャージー10,4481,1762
3. マサチューセッツ5,8628504
4. ミシガン4,9154927
8. カリフォルニア3,3218430
全米92,188279n/a
7496n/a
検査件数と受検率(5月19日現在、*4)
検査件数人口100万人あたりの
検査件数
受検率の順位
50州+ワシントンDC
1. ニューヨーク1,442,07774,1293
2. カリフォルニア1,370,94934,69723
3. テキサス735,62125,37044
4. フロリダ677,71031,54429
5. イリノイ603,24147,60513
全米12,343,33437,291n/q
日本250,1511,977n/a

市民生活の実態

ロックダウン アメリカ市民生活
社会的距離を取ってスーパーの入店を待つ客 (Wikimedia Commons)

最後に市民生活について少しまとめます。企業が在宅勤務に切り替え、店が閉まり、公共施設も利用不可になったことで交通量や人が激減し、街中はがらんとした雰囲気になりました。ただ封鎖といっても戒厳令とは違うので物々しさはなく、犬の散歩、ジョギング、芝刈りといった光景は常に見かけました。

とはいえ油断は禁物で、知人が公園で何人かで集まって話していたら、地元警察が来て1人につき罰金200ドルの違反切符を切られたそうです。集会が禁止されているからです。4月に大きなニュースになった違反では、遠出してお酒を購入し屋外で飲んでいた7人の男性が、1人につき罰金1000ドル(!)を課されました(*5)。つまり発令であるからには守る義務があり、違反者には厳しい罰則があるということです。

スーパーやドラッグストアなど開いている小売店の多くがソーシャルディスタンス(社会的距離)を要請し、入店人数の制限を始めました。そのため店の外で待つのも日常となりました。マスクをはじめとするフェースカバー着用を入店の条件とする店が増え、自治体によっては義務化する地域も出ました。

このように2ヵ月暮らしてみて、個人的には「不便だが生活はできる」というのが率直な感想で、「封鎖」というと大げさに聞こえますがあまり大変だとは感じませんでした。むしろ州政府、自治体、小売店の徹底した対応に感謝する気持ちのほうが強く、周囲もそういう意見の人が大多数でした。また、カリフォルニアの住民は変化に柔軟に対応できることを改めて感じました。マスク着用をめぐっては政治で意見が分かれるアメリカですが、カリフォルニアではみな任意で着用しており、他人と距離を取ることもすぐ習慣化しました。

出典

*1 World Bank
*2 Wikipedia: Economy of California
*3 FiveThirtyEight: Most Americans Like How Their Governor Is Handling The Coronavirus Outbreak、他
*4 WorldometerInstitute for Health Metrics and EvaluationのデータをもとにCimplex Marketing Group, Inc.が集計
*5 CNN: That’s an expensive round of ‘essential drinks.’ Seven people fined $1,000 each for violating stay-at-home order

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