アメリカ人はなぜプレゼンがうまいのか?後編:英語のプレゼンで実践したいこと

プレゼンをする人

アメリカ人はなぜプレゼンがうまいのか?前編ではこの問いに対する洞察を「プレゼンの真髄」としてまとめました。今回は英語のプレゼン、特にアメリカ式で実践したい実用的なポイントを伝えます。 

アメリカ式プレゼンでやってはいけないこと 

本来は「やるべきこと」を先に書いたほうが良いのでしょうが、あえてDon’tsからスタートします。その理由は、日本人の日常にあるプレゼンが、アメリカ式ではほぼNGだからです。 特に気をつけたいのが以下の5点です。

アメリカ式プレゼンのNG項目

前編で、日本人に馴染みのあるプレゼン場面を「全校朝礼での校長先生の話から、会社での社長の訓示に至るまで」と表現しましたが、それらを思い出して欲しいのです。1~5に当てはまると思いませんか?もちろん全部が全部とは言いませんが、祝辞や弔辞なども含め、日本のプレゼンは概してこういう傾向に陥りやすいのです。 

私の長いアメリカ生活の中で、プレゼン考察において忘れられない経験があります。現地で交友関係のあった日本人の方が亡くなり、葬儀に出席した時のことです。参列者には日本人もアメリカ人もいて、日本語と英語の弔辞がありました(日本語には英語の通訳がついた)。日本人の代表は、故人がいかに立派な人物であったかを伝え、時に涙しながら、故人を失ったことの無念さを懇々と語りました。もらい泣きする参列者も多く、私も馴染みのある日本的なスタイルでした。 

その後にアメリカ人が行った弔辞で、会場の雰囲気はガラリと変わりました。その人は弁護士で職業柄かなり弁が立つのでしょうが、故人との思い出を幸せそうに語り、時に「このことはご家族も知らないと思うけど」のようなジョークを交えて色々な逸話を提供したのです。そして最後に「彼に会えないのは寂しいけれど、多くの時間を一緒に過ごしてくれたことに感謝します」と朗らかに結び、200人以上いた参列者は癒されたような気持ちになったのです。これはハッキリと感じました。 

私は「なんてすごいプレゼンなんだろう」と鳥肌が立ちました。前編の話に戻りますが、プレゼンの主役は話し手ではなくオーディエンス(聴衆)です。弔辞において、オーディエンスの中心は遺族です。その遺族の悲しみが和らぐ話に徹する、故人との時間に感謝する、二度とは訪れないこの機会に・・・そんな弔辞のあり方を知って日米の違いを痛感したのです。弔辞でジョークを述べるのは不謹慎でしょうか?私は、悲しみがピークに達している遺族の傷を癒すことは、本当の意味での「弔い」ではないかと思いました。 

アメリカ式プレゼンの基本構成 

Don’tsを前提にここからDosを紹介していきます。まず、アメリカ式プレゼンには「予告、本題、まとめ」という3大構成が基本にあり、以下のような役割を果たしています。

プレゼンの基本構成。予告、本題、まとめ。

最初の「予告」ではこれから話すことを先に伝えます。例えばこんな感じです。 

Today I’ll discuss the importance of data science. 
(私は本日、データ科学の重要性についてお話します) 

と、これは日本のプレゼンでも普通にやりますよね。ですがアメリカ式ではその先まで伝えてしまいます。以下のように「重要なトピックは3つ」とあらかじめ言っておけば、オーディエンスは「なるほどトピックは3つだな」と分かり、「今プレゼンのどの辺にいるのか」を認識でき、頭の整理に役立つのです。 前編で紹介したスティーブ・ジョブズ氏もやっています。

I have three main topics for it: the latest on data science, the new applications and future projection. I’ll show you key bullet points and examples for each one. 
(主要なトピックが3つあります。データ科学の最先端、新しい応用法、そして今後の予測です。それぞれの重要ポイントと事例をお見せします) 

次に「本題」ですが、以下のように進めることができます。トピック3つが念頭にあるので、「最初、次、最後」という切り替え言葉によって、現在地が明確に分かります。 

First of all, let’s talk about the latest trend of data science. 
(まず最初にデータ科学の最新トレンドについて話します) 

Let’s move on to the next topic, that is new applications of data science. 
(次のトピックであるデータ科学の新しい応用法に移りましょう) 

Last and not least, I’ll share future projections of data science with you. 
(最後になりますが、データ科学の今後を共有します) 

そして「まとめ」では、今まで話してきたことを振り返ります。以下のように、予告で使った文が過去形になる感じです。必要に応じてその後に結論を入れて締めくくります。 

Today I discussed on the importance of data science. We went over the three topics that include the latest trend, the new applications and future projections.  
(今日はデータ科学の重要性とその応用法について話しました。最新トレンド、新しい応用法、今後の予測を見ていきました) 

In conclusion, data science is now applied to much more diverse industries than ever. It is extremely important to raise awareness on the study and educate the people in the field. Thank you. 
(結論として、データ科学はこれまでにないほど多様な産業で活用されています。その研究に対する認知を向上し、人材を育成することは極めて重要です。ご清聴ありがとうございました) 

基本的な組み立ては意外と簡単ですよね。これができるだけでもプレゼンがうまいと思われるので不思議です。 

アメリカ式プレゼンの中級テクニック 

プレゼンの中級テクニックは本題の進め方です。私が考えるのは以下の3点、本文を論理的に組み立てる、重要なことから先に述べる、スライドは文字を最小限にする、です。

プレゼンの中級テクニック

先の例のように3つの主要トピックがあったとします。それらは論理的な順番で並んでいる必要があります。よく目にするのは、重要な順番、関連性に基づいた順番、時系列などです。ただし歴史や過去の話は、よほど大きな意味を持つ時やそれ自体がプレゼンテーマという場合を除いて割愛されます。日本のプレゼンでは「我が国のデータ科学における研究は19xx年に遡り・・・」という前置きから始まりがちですが、アメリカ式では「時間がもったいない、そんなことはみな知っている」となります。 

起承転結に慣れきっている日本人が習得したいのが、重要な順番から話すことです。例えば、顧客に新しい戦略を提案するプレゼンだとします。つい背景説明やデータの紹介から入ってしまいますが、アメリカでは「本日の提案内容はこれです(ジャン!)」と結論を先に出すことが多々あります。最初にいちばん大きなインパクトを持ってくるのです。そして相手が「ほほう」と興味を持ったタイミングで「この提案に至った理由と裏付けデータは次のようなものです」と説得材料を出していきます。そして最後に「このような現状から、冒頭に紹介した戦略を提案いたします」と結ぶことができます。 

よりマイクロな構成で重要な順番に話す方法もあります。先の例では3つの主要トピックがありました。それぞれの重要ポイントをトピックの最初に紹介してしまうのです。こんな感じになります。 

First of all, let’s talk about the latest trend on data science. I want to point out two key features in the trend. 
(まず最初にデータ科学の最新トレンドについて話します。2つの重要な特徴を指摘させて下さい) 

スライドの作り方にもコツがあります。日本のスライドは個人的によく面喰らうのですが、文字がぎっしりで情報過多の傾向があります(ワイドショー番組で使うフリップボードが良い例)。アメリカでは補足資料として要点だけ入れるのが普通で、イラストや画像なども多用します。最近は絵文字やアイコンもポピュラーです。スライドに話の内容がぜんぶ書いてあると、オーディエンスは文字を追うことに集中してしまい、スピーチを聞かなくなります。それではプレゼンの意味がなくなってしまいます。 

アメリカ式プレゼンの上級テクニック 

最後に上級テクニックですが、これはあげればきりがありません。よくコツとして「ジョークを交えながら軽快に」「手振りを大きく」みたいなことが書いてありますが、そういう小手先系はやめたほうがいいです。代わりに、自分のキャラを外れない、臨機応変に対応できる、聴衆に気を使わない自然さ、の3点を提案します。突き詰めると、前編からしつこく言っている「主役はオーディエンス(聴衆)」をどこまで具現化できるかが、上級への道のりなのです。 

プレゼンの上級テクニック

例をあげます。アメリカ式プレゼンでは「ここまでの話は理解できましたか?」のように途中で何度かオーディエンスとのやり取りがあります。そこで質問が入り、すぐ応答するのも一般的です。オーディエンスを置き去りにせず、台本から脱線しても臨機応変に対応できるのは上級スキルと言えます。そして想定外のことが入っても軌道修正して時間通りにプレゼンを終わらせるスキルも、やはり上級です。多くのプレゼンターは想定外を含んで時間配分しています。「台本通り=成功」とは言えないからです。 

最後にボディランゲージですが、日本人がいちばん努力したいのは目線です。上記に付随しますが、台本を読むことに一生懸命な日本人がとても多いのです。オーディエンスを直視することに恐怖を感じるなら、その手前や後ろを見るなどで「うつむいたままの話し手」を回避するべきです。無理して不自然な笑顔を作る必要はありませんが、重苦しい雰囲気を作らないよう、穏やかな表情くらいは心がけたいですね。不自然な動きや緊張は見ているほうにもすぐ伝わるので、そういうことでオーディエンスに気を使わせない発表ができれば、もう上級者と言えるでしょう。 

プレゼン考察 番外編 

冒頭にまとめたDon’tsを少し補足します。2021年に世界中が注目するイベントでNGすぎるプレゼンを延々と展開した人がいますよね。そうです、東京オリンピック開会式でスピーチした国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長です。これは各国のメディアやSNSで大バッシングが起こり、酷暑の中で競技を控えた選手達を置き去りにしていると大きく批判されました。もちろんスピーチが向けられたのは選手だけではありませんが、日本でも「オーディエンスのことをもっと考えろ」という議論が出たのは良かったと思います(余談ですが、アメリカではドイツ人もプレゼン下手という偏見があります、笑)。 

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アメリカ人はなぜプレゼンがうまいのか? 前編:プレゼンの真髄 

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Miyuki Sato

Cimplex Marketing Group代表
在米20年以上、専門分野は市場調査
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